- 民間の医療保険は何故不要なのか
- 医療保険はどんな人に必要か
- マイナ保険証には加入した方が良い
年金保険はいらない、生命保険は掛け捨ての最低限で良いというのはわかったけど、医療保険はどうなの?
医療保険もやはりおすすめはしないですね。
勿論、医療保険があったことで金銭的にプラスとなった人もいるでしょうが、多くの場合は払い損になると思います
どうしていらないの?
病気になったらすごくお金が掛かりそうだから、保険に入っていたほうが安心だと思うけど
その通りです。
保険というのは万が一の時に備える安心料を払っているので、どうしても損になってしまうんです。
何故民間保険に入らなくてもよいのか
以下の理由があげられます
- 日本の国民皆保険は非常に優秀
- 高額療養費制度があり、負担の上限が決まっている
- 難病は上限が更に安い
- 民間の保険には穴が多い
- がんは2人に1人発症するというのは80代になってから
一つ一つ見ていきましょう
日本の国民皆保険はどれくらい優秀か
海外と比べてみましょう
アメリカの場合、富裕層と貧困層で加入している保険が異なり、受けられる治療に差があります
イギリスの場合、かかりつけ医の受診は無料ですが、そこから専門医へ紹介となると数カ月先になることもあります
ドイツの場合、公的あるいは民間の医療保険に加入することが義務づけられています。受診は無料ですが救急車は有料で一回6万円ほどかかります
日本では、大学病院などは予約が入っていて受診が先になることもありますが、概ね短期間で病院の受診が可能です。また海外では有料なことが多い救急車は無料です(これには賛否両論あります)
世界一の保険制度かどうかは賛否両論あるかもしれませんが、優秀な保険制度であることは異論がないでしょう
高額療養費制度
医療費が高額の場合、かなりの負担になります。
所得によって上限が異なりますが、金銭的な負担がかなり軽減される制度です。
70歳未満の場合
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数該当 ※2 |
---|---|---|
① 区分ア (標準報酬月額83万円以上) (報酬月額81万円以上) | 252,600円+(総医療費※1-842,000円)×1% | 140,100円 |
② 区分イ (標準報酬月額53万〜79万円) (報酬月額51万5千円〜81万円未満) | 167,400円+(総医療費※1-558,000円)×1% | 93,000円 |
③ 区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円) (報酬月額27万円〜51万5千円未満) | 80,100円+(総医療費※1-267,000円)×1% | 44,400円 |
④ 区分エ (標準報酬月額26万円以下) (報酬月額27万円未満) | 57,600円 | 44,400円 |
⑤ 区分オ(低所得者) (市区町村民税の非課税者等) | 35,400円 | 24,600円 |
※1総医療費とは保険適用される診察費用の総額(10割)です。
※2療養を受けた月以前の1年間に、3ヵ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4ヵ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減されます。
引用元:全国健康保険協会
難病は上限が更に安い
慢性に経過し、症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病を難病と呼びます
そのうち、国が指定し医療費を負担するものを「指定難病」と呼びます
小児には同様に小児慢性特定疾患というものがありますが、こども医療費助成制度の方が安いです
こども医療費助成制度は対象が自治体によって異なりますが、長くても18歳までのものが多いです
小児慢性特定疾患は最長で20歳まで助成があり、医療費が安くなります
小児慢性特定疾患では対象疾患であるが、指定難病の対象疾患ではない疾患は20歳から3割負担です
指定難病の自己負担は下記です
参照元:難病情報センター 指定難病患者への医療費助成制度のご案内
担当の医師から説明はあると思いますが、医療費助成を受けるには申請が必要なので注意しましょう
また、毎年更新が必要です
民間の保険の穴
医療の進歩に伴い、最近は癌でも入院期間が短くなり、外来通院で治療されることが多いです
しかし、医療保険の中には通院治療では保障がないことやあっても特約を付与する必要があることが多いです
がんは2人に1人?
がん保険への加入を勧める謳い文句として「2人に1人は癌にかかる時代」という言葉がありますが、これは部分的には正しく、部分的には間違いです。
以下に、その時点の年齢で癌にかかっていない人が今後癌に罹患する確率です
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 | 生涯 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20歳 | 0.3% | 0.9% | 2.5% | 7.4% | 21.3% | 43.1% | 65.6% |
30歳 | 0.6% | 2.2% | 7.2% | 21.2% | 43.1% | ー | 65.8% |
40歳 | 1.6% | 6.6% | 20.8% | 43.0% | ー | ー | 66.0% |
50歳 | 5.2% | 19.7% | 42.5% | ー | ー | ー | 66.2% |
現在の年齢 | 10年後 | 20年後 | 30年後 | 40年後 | 50年後 | 60年後 | 生涯 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20歳 | 0.5% | 2.0% | 6.1% | 12.3% | 21.3% | 33.3% | 51.2% |
30歳 | 1.6% | 5.7% | 12.0% | 21.0% | 33.0% | ー | 51.1% |
40歳 | 4.2% | 10.6% | 19.7% | 32.0% | ー | ー | 50.4% |
50歳 | 6.7% | 16.3% | 29.2% | ー | ー | ー | 48.5% |
癌に罹患する確率は60~70歳頃に急激に上昇します
60歳まではがんの罹患率は10人に1人程度と低いです
極端な例えですが、200歳まで生きれば、ほぼ100%の人が何らかの癌に罹患するでしょう
癌罹患率が上昇する60~70歳までに、投資などで備えておきましょう
医療保険を考慮する人
保険はもしもの時の備えという性質上、確率的には多くの方は払い損になることが多いです
しかし、医療保険に入るか考えても良い人が事実です
- 現在、貯金がかなり少ない人
- 入院した際には絶対に個室を利用したい人
- 癌家系の人
現在、貯金がかなり少ない人
ある程度の資金が貯まるまでは、最低限の保障をつけておいても良いかもしれません
ただし、多くの人は原則不要なのではないかと考えています
絶対に個室が良い人
多くの病院では、感染症や主治医が個室での必要と判断した場合を除き、患者希望での病室の変更は差額ベッド代がかかります。
差額ベッド代や食事代は高額療養費の適応外となります。
平均で1日6000円、個室の場合は8300円程度かかるようです。
個室の場合、2泊3日だと3日ですので24900円余分にかかる計算となります。
医療保険の中には差額ベッド代をカバーしてくれるものもあるようですので、それを検討しても良いのかもしれません。私は入っていないので、おすすめの保険はとくにありません。
癌家系の人
少しお金ではない話をします
病気の原因として、遺伝要因と環境要因があります
出典元:大藤 道衛 「バイオ実験超基本Q&A 改訂版」羊土社2010より引用改変
上の図では左の疾患ほど遺伝要因によって発症し、右の疾患ほど環境要因によって発症します
一番左は100%遺伝要因、一番右は100%環境要因となります
ここでいう癌家系とは、一般癌ではなく遺伝性癌の家系のことを指します
中学校理科でメンデルの法則というものを習ったかと思いますが、覚えておられるでしょうか?
その中でも優劣の法則というものがあります。
すごくシンプルに言えば、両親のどちらかが遺伝性癌の場合、子供に遺伝する確率は1/2です
これを顕性遺伝と言います(以前は優性遺伝と言っていました)
このような方は若年性に癌を発症するリスクが高く、保険で元を取れる確率が高いと言えます。
マイナ保険証
色々言われていますが、マイナ保険証には早めに加入しておいたほうが良いです
そもそも紙の保険証は2024年12月以降は新規発行されなくなりますし、そもそもマイナ保険証の方がお得です。(マイナ保険証を利用できない人は健康保険組合や協会けんぽ、自治体などに申請して「資格確認証」を発行してもらう必要があります)
マイナ保険証のメリット
- 紙の保険証より窓口支払が安くなる
- 高額療養費制度を利用する際の窓口負担は自己負担限度額のみ
マイナ保険証で窓口支払がいくら安くなるかですが、これはすごく小さいです
初診時の窓口支払が6円安くなります・・・まあ、塵も積もればですかね
高額療養費制度については上述しました
35歳男性(年収500万)がなんらかの原因で入院し、医療費が100万円かかったとします。
負担額は現行の制度では3割の30万円です。窓口支払も30万円です
高額療養費申請書を協会けんぽ支部に提出すると、後から超過分が還付されます
急に言われても払えない人もいるかも知れません
高額になることが事前にわかっている場合、限度額適用認定証を提出しておけば窓口負担は下がります
でも、入院して本人はしんどくて、家にいる家族も忙しい時にそんな手続きをする余裕があるでしょうか?
一人暮らしの場合、代わりに手続きしてくれる家族もいないかもしれません。
しかし、マイナ保険証では手続きをしなくても窓口での支払いは最初から自己負担限度額で済みます。
年収500万円の人は区分ウとなるので、医療費の負担は以下の通りです
80,100円+(1,000,000-267,000円)×1%=87,430円
(別途食事代や差額ベッド代は必要)
これは大きなメリットと言えるでしょう
マイナ保険証のデメリット
- 使用できない医療機関もある
- 個人情報漏洩のリスク
2024年7月時点で、医療機関の91.2%がオンライン資格確認の機器を導入しています
参照元:オンライン資格の都道府県別導入状況について
逆に言えば8.8%の医療機関では使用できないようですね・・・
導入に初期費用がかかるとはいえ、患者さんが不便になるので12月までの導入が望ましいですね
別人とのデータ紐づけやのっとり
以前に別人のデータが紐づけられたニュースもあり、マイナンバーカードの作成に否定的な人もいます。
勿論強制はできないので、そのような方は高額療養費の申請などは遅滞ないようにしましょう
一度情報が漏れてしまうと、紙の保険証よりも悪用しやすい面もあると思いますので自衛が大事ですね
- 置き忘れをしないようにする
- 家族など信頼している人以外には暗証番号を絶対に伝えない
- クレジットカードでもそうですが、詐欺サイトに注意する
結論
日本は世界の中でも公的保険が充実している国です
他の民間保険と同様、医療保険も保険会社の利益を差し引いている分、元を取れる確率は低いです
保険は必要最低限にし浮いたお金で少しでも早く投資を始め、食事内容や運動習慣を見直したほうがトータルのリスクは低いでしょう
- 新しい保険の加入を検討している場合は、しっかりとライフプランを考える
- 今入っている保険は本当に必要か考え直し、要らないなら解約する
上記をしっかりと行いましょう。お疲れ様でした。
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